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M5ロケット打ち上げ成功──宇宙開発を支へた地元婦人たちの敬神 [敬神]

以下は斎藤吉久メールマガジンからの転載です


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 M5ロケット打ち上げ成功──宇宙開発を支へた地元婦人たちの敬神
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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は昨日、新型固体燃料ロケット「イプシロン」1号機の打ち上げに成功しました。

「イプシロン」の前身「M5」ロケットは、7年前、コストがかかるという理由で開発が中止されました。

 開発した文科省の宇宙科学研究所が、内之浦で最後の「M5」ロケットを打ち上げたのは、平成15年5月9日のことでした。

 そんなわけで、そのとき書いた記事を転載します。なお、掲載紙の編集方針に従い、記事は歴史的仮名遣いで書かれています。



 文部科学省の宇宙科学研究所(宇宙研)は五月九日午後、小惑星探査機を載せたM5ロケットを鹿児島・内之浦町の鹿児島宇宙空間観測所から打ち上げた。打ち上げは成功し、探査機は「はやぶさ(隼)」と命名された。

 M5ロケットは宇宙研が開発した科学衛星打ち上げ用ロケットで、固体燃料ロケットとしては世界最大級。平成十二年二月に三機目が打ち上げに失敗、三年ぶりの四機目打ち上げでやうやく衛星を軌道に乗せることができた。

 小惑星探査機は三億キロの彼方、火星と木星の軌道間にある小惑星のひとつから岩石のかけらを採取し、四年後、地球に帰還する。人類はこれまで月の石を持ち帰ったことはあるが、月以外の天体ではない。成功すれば世界的な快挙となる。


▽1 ベビーロケットに方位神社のお守り

 宇宙研の歴史は、昭和三十年、東京大学生産技術研究所のペンシル・ロケット発射実験に始まる。

 同年夏、秋田県道川海岸から発射されたベビーR型一号機には、日本のロケットの父・糸川英夫氏の愛車に祀られてゐた方位神社のお守りが乗せられた。

 実験後、搭載カメラとともに回収された、海水に濡れたお守りを手に、糸川氏は世界初のロケット海上回収成功を満面の笑みで喜んだと伝へられる。

「陸の孤島」ともいはれた鹿児島県・大隅半島の南端・内之浦町で、日本で二番目のロケット発射場、東京大学鹿児島宇宙空間観測所の起工式がおこなはれたのは、それから七年後の三十七年二月である。

 神事を奉仕したのは、内之浦の氏神社・高屋神社の神職宮地定夫氏で、鍬入れは東大総長・茅誠司氏ほかがおこなった。

 高屋神社は第十二代天皇景行天皇の御世の創建で、天皇の御親祭にかかるといふ。境内の背後にそびえる「高屋山陵」は景行天皇の御陵とも伝へられる。

 この年は雨が多く、また土木作業員の募集が思ふに任せなかった。道路工事などの作業を支へたのは、地元の婦人会であったといふ。

 鹿児島では婦人会指導者としてよく知られる田中キミさんらが無償奉仕で、湯茶の接待や宿舎の斡旋などに協力した。内之浦に仕出し屋はなく、起工式の日に二百人分の弁当を作ったのも、婦人会である。

 ラムダ・ロケットの発射実験が始まると、田中さんらは寒波が押し寄せる中、杉木立に囲まれた高屋神社に早朝の成功祈願をおこなった。しかし失敗が相次ぎ、糸川氏の国産ロケットは「風に弱い。軌道に甘い」とマスコミに書き立てられた。

 それを田中さんたちは、研究者や技術者たち以上に、わがことのやうに悔しがった。日本の宇宙開発を、地元の人の和と伝統的信仰が支へ、力づけたのである。


▽2 成功祈願で技術者がお供へする焼酎

四十五年二月、日本は、アメリカ、ソ連、フランスに次いで、四番目に人工衛星の打ち上げに成功した。

 日本初の人工衛星はラムダ・ロケットで、ここ内之浦から発射され、鹿児島の地名にちなんで「おおすみ」と命名された。成功の日、町には祝砲を合図に、旗行列が繰り出したといふ。

 高屋神社の現宮司・宮地誠一氏によると、発射実験がおこなわれたあとの拝殿には、「糸川英夫、あるいは技術者一同の名で、焼酎が供へられてゐた」。

 打ち上げを前に、成功祈願にお参りしたらしい。日本酒ではなく焼酎といふのが、いかにも鹿児島といふべきか。

 平成十一年二月、糸川氏は帰らぬ人となる。町では町長の提案で有力者が、もちろん田中さんも加はって、偲ぶ会がもたれた。宇宙研ニュースには田中さんの追悼文が載ってゐる。その田中さんもいま百歳を超える。

 二十数個の科学衛星・探査機を打ち上げてきた宇宙研は、今年十月、宇宙開発事業団、航空宇宙技術研究所と統合される。宇宙研のロケット打ち上げは今回が最後となった。また二年後には、割高な打ち上げ費用を理由に、M5ロケットの開発が終了する。
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