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憲法は宗教の価値を否定してはいない ──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 1 [御代替わり]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2018年12月23日)からの転載です

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憲法は宗教の価値を否定してはいない
──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 1
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 今日は天皇誕生日です。今上陛下には宝算85、先帝に次ぐ歴代2位のご長寿となりました。そして、平成最後のお誕生日でもあります。

 お誕生日に当たり、例年どおり記者会見のお言葉が公表されました。平成27年以来、代表質問は一問のみとなり、今年は「現在のご心境」がテーマとされましたが、陛下はいつものように、まず災害の犠牲者や被災者に深く心を寄せられました。

 その上で、「譲位の日」まで、象徴天皇としての望ましいあり方を求めながら、日々の務めを果たしたいと仰せになり、即位後の道のりをさまざまに振り返られ、さらには国際化が進む国の将来への思いを述べられました。

 とくに、言葉を詰まらせながら、「人生の旅」を共に歩まれる皇后陛下をねぎらわれたことが印象的でした。よき伴侶の理解と協力が得られたからこそ、ご結婚以来60年のお務めがあるのでしょう。

 さて、お言葉にもありますように、来春、陛下は譲位され、新しい時代が始まりますが、この皇室の最重要事であると同時に、国の最重要事である皇位継承に冷水を浴びせるかのように、御代替わりの諸儀礼に国費が投じられるのは政教分離原則に反すると訴える違憲訴訟が起こされました。

 その主張はどこまで正当なのか、背景に何があるのか、しばらく検討してみたいと思います。


▽1 靖国訴訟との人的つながり

 報道などによれば、今月10日、退位の礼や即位の礼、大嘗祭に公金が支出されるのは憲法違反だとして、市民団体のメンバーら241人が、公金支出の差し止めと1人あたり1万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

 御代替わりの諸儀式は宗教的色彩が濃い。とくに大嘗祭は新天皇に神格を与える明白な宗教的儀式であり、他の宗教者・無宗教者を圧迫する、などというのが、その言い分のようです。

 訴状は公にされていませんので、正確な分析・検討は難しいのですが、幸い、いくつかの資料がありますので、ご紹介かたがた、吟味することにします。

 原告らは「即位・大嘗祭違憲訴訟の会」という市民団体を立ち上げています。原告らの媒体によると、10月に違憲訴訟の呼びかけが行われ、11月に会が立ち上げられました。

 呼びかけ人には、石川逸子(詩人)、鵜飼哲(フランス文学・思想研究者)、小倉利丸(元大学教員)、木村眞昭(真宗僧侶)、小林緑(国立音楽大学名誉教授)、桜井大子(女性と天皇制研究会)、佐野通夫(大学教員、教育学)、菅原龍憲(真宗僧侶)、辻子実(安倍靖国参拝違憲訴訟原告)、関千枝子(ジャーナリスト)、関谷興仁(作陶家)、菱木政晴(靖国合祀イヤですアジアネットワーク)、星出卓也(日本キリスト教協議会靖国神社問題委員会委員長)の名前があがっています(敬称略)。

 直接は無関係のはずの靖国訴訟とのつながりが容易に見て取れます。事務局は西東京のキリスト教会、新橋の法律事務所に置かれているようです。また、秋篠宮文仁親王殿下の先のご発言も追い風になっているようです。


▽2 天皇は「特別公務員」

 主張の中身ですが、訴訟への参加を募る呼びかけ文は、その冒頭でずばり、「天皇の『生前代替わり』に際して、私たちは税金を憲法に違反する諸行事に使わないよう、公費支出差し止め訴訟を起こしたい」と宣言しています。

 今回の御代替わりは、NHK社会部による「生前退位」報道に始まりました。非歴史的で異様な用語の使用はいまではマスメディアからほとんど消えていますが、呼びかけ文の「生前代替わり」という表現はなおのこと異様です。

 歴史的な皇室用語を拒否し、新語を創作・使用する背景には、長い皇室の歴史を受け入れようとしない偏屈さがうかがえます。原告らにとっての天皇とは何でしょうか。

 今回の御代替わりについて、「2016年の天皇の『ビデオメッセージ』に始まった『退位』騒ぎ」と口汚く表現していることにも、単なる「公費支出差し止め訴訟」ではないことを痛感させます。

 わずか1200字程度の文章で、多くのスペースを割いて批判されているのは、「退位」特例法の文体についてで、「不気味な条文」と指摘しています。「人間明仁を指すときは『天皇陛下』、制度上の役割を示すときは『天皇』としているかのようですが、法律なのに敬語が満載されています」というのです。

 逆に敬語を省略した原告らの文体は、古来の天皇のあり方を否定し、日本国憲法の規定に厳格な解釈・運用を要求しているようです。

 実際、文章は続いて、国事行為以外の天皇の行為は憲法原理からは認められない、公的行為など憲法上存在し得ない、逆に、天皇は特別公務員として憲法を尊重・擁護する義務を負うとたたみかけています。

「人間明仁」という表現にはいわゆる「現人神」天皇論への反発が見えます。原告らには天皇はあくまで「特別公務員」なのです。


▽3 宮中祭祀は「国の宗教的活動」なのか

 そのうえで、憲法には皇位継承の手続きが定められていない。それなのに、前回は123億円の膨大な税金が投じられた。皇室典範には即位の礼に関する具体的な規定はなく、大嘗祭については記載すらない。一連の儀式は政教分離・主権在民原則に反するもので、大阪高裁は「違憲の疑い」を明示した、と主張しています。

 そもそも憲法は「すべて皇室財産は国に属する」と定めており、皇室財産も関連経費も国民の税金だから、「天皇の生前代替わりに際して、このような憲法違反の行為に税金支出をさせないよう、公費支出差し止め訴訟(納税者訴訟)としてこれを問う裁判を起こしたい」というわけです。

 原告らには、悠久なる皇室の歴史への敬意は感じられず、優先されるのは日本国憲法の国民主権主義であり、政教分離原則ということになります。

 しかし大嘗祭とはいかなる儀礼なのか、大嘗祭の宗教性が否定できないとして、それは憲法が禁止する「国の宗教的活動」に当たるのでしょうか。宮中祭祀には教義はなく、教団もなく、宣教師もおらず、布教の概念すらありません。国民の信教の自由を侵しようがありません。

 また、憲法は宗教の価値を認め、信教の自由を保障しているのであって、宗教を悪と見なし、否定しているわけではありません。憲法学者の小嶋和司教授が指摘したように、憲法は宗教的無色中立性を国家に要求しているわけではないのではありませんか。

 いわゆる神道指令を発した占領軍でさえ、占領後期になると、神道形式による松平参議院議長の参議院葬(昭和24年11月17日)、皇室喪儀令に準じた貞明皇后の御大葬(同26年6月232日に斂葬の儀)、吉田首相の靖国神社参拝(同10月18日)を認めています。

 先の大嘗祭違憲訴訟では、最高裁は合憲判断を下しています。

 古代から続く皇位の継承は、皇室の最重要事であると同時に、国の最重要事であり、国費が投じられるのは当然でしょう。憲法や皇室典範に、皇位継承に関する規定が十分ではないというのなら、望ましい条文に改めるべきではないでしょうか。

 次回からはさらに詳しく探求したいと思います。
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