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靖国訴訟原告団が作成したパンフレット序文の「偽善」 ──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 2 [御代替わり]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2019年1月4日)からの転載です

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靖国訴訟原告団が作成したパンフレット序文の「偽善」
──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 2
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 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。


▽1 正面から向き合い、学ぶ姿勢は立派

 さて、昨年12月、御代替わり儀礼違憲訴訟を東京地裁に提訴した市民団体の言い分は妥当なのか、吟味を続けます。

 前回は、提訴の前に13人の「呼びかけ人」が原告団への参加を広く一般に募った「委任状」の文章を材料に、原告らが、古来の天皇のあり方を否定し、日本国憲法の規定に厳格な解釈・運用を要求していること、天皇は国事行為のみを行う特別公務員だと考えていること、即位礼・大嘗祭は政教分離・主権在民主義に反するから、「生前代替わり」に税金は支出されるべきではないと主張していること、などを紹介し、若干の批判を加えました。

 今回から、もう少し詳しく、その考え方を検討してみます。御代替わりはどのようなものと考えられ、批判されているのでしょうか。

 訴訟グループのサイトを見ると、原告たちが、首相の靖国参拝訴訟や天皇制反対派と直結していることが容易に理解されます。ネットワークが直接にリンクされているからですが、そればかりではありません。

 この靖国訴訟の原告たちが作成した、御代替わりをテーマにした、色鮮やかな表紙のパンフレットが目を引きます。タイトルはズバリ、「即位・大嘗祭Q&A 天皇代替わりってなに?」です。A5判並製で40ページ。一部300円で販売されているほか、PDFファイルが簡単にダウンロドできるようになっています。

 訴訟グループは表裏一体なのでしょう。とはいえ、靖国訴訟の原告たちが、天皇および天皇制について正面から向き合い、学び、分野が異なる御代替わりについて、まとまったパンフレットを作製し、一般市民の便宜を図っているのは、たいへん立派で、感心します。

 心から敬意を表しつつ、さっそくダウンロードし、中身を拝見することにします。


▽2 Q&A形式で16項目にわたって解説

 表紙には「即位・大嘗祭Q&A 天皇代替わりってなに?」というタイトルが横書きで大きく示されています。「御代替わり」ではなく、あくまで「代替わり」です。タイトルの下に、パンフレット制作者である、靖国訴訟の原告たちの東京事務局名が記載され、その下に訴訟の横断幕を掲げ、裁判所に向かう原告と思われる十数人の男女の写真が載っています。個人名は見当たりません。

 表紙をめくると、まずパンフレット作成の意図を説明する序文があり、そのあと、以下のように16項目にわたって、Q&A形式で、関連写真も挿入しながら、御代替わりについて解説されています。煩瑣をいとわずに、そのまま書き出します。

1、「代替わり」ってなに?
2、政教分離ってなに?
3、「即位の礼」ってなに?
4、「大嘗祭」ってなに?
5、「現人神」ってなに?
6、即位礼・大嘗祭訴訟ってなに?
7、悠紀田、主基田ってなに?
8、「三種の神器」ってなに?
9、宮中祭祀ってなに?
10、国家神道ってなに?
11、天皇と靖国神社の関係ってなに?
12、「慰霊」ってなに?
13、「改元」ってなに?
14、天皇の「ご公務」ってなに?
15、「女性天皇問題」ってなに?
16、「祝日」ってなに?

 テーマがじつに網羅的で、問題関心の幅広さに感服します。御代替わりのみならず、靖国問題や女性天皇論、祝日まで取り上げられています。保守派でもここまで広範囲な知識を備え、コンパクトに、しかも平易に整理できる人はめったにいないでしょう。人材のレベルの高さを感じさせます。保守派は原告らに学ぶべきではありませんか。

 最後のページには、日本国憲法の関係条文、平成の御代替わりの諸儀礼が一覧表にまとめられています。懇切丁寧です。

 奥付によると、第一刷の発行は2017年4月で、現在は同年5月発行の第二刷です。提訴の半年以上前から準備されていたことになります。計画的に進められているということでしょう。周回遅れの議論で後手に回る保守派は、これまた謙虚に学ぶべきではありませんか。


▽3 憲法が禁じる「国の宗教的活動」か

 序文を読んでみましょう。出版の目的です。

 冒頭で、作成者の靖国訴訟原告団は、安倍首相靖国神社参拝訴訟の経緯について簡単に説明したあと、「ところで」と話題を「明仁天皇」の「生前退位」に転じます。

 筆者はまず、議論の輪に加われないでいる不満を表明しています。

 すなわち、「国会での議論がおこなわれる前に、早くも2018年中の退位と新天皇の即位、それに伴う『即位の礼』、新元号の制定、2019年秋の『大嘗祭』というぐあいに、『代替わり』の儀式をすることが、決まった話のように進んでいます」という状況だからです。

 筆者には、日本国憲法に基づき、国会で議論されるべきだという信念があるのでしょう。国民主権下においては、御代替わり儀式は天皇・皇室の儀礼ではない、という認識になります。

 つづけて筆者が書き進めているように、「天皇制は『国民主権』原則にたつ日本国憲法で規定された国家の制度です」という理解です。

 それなら、御代替わり儀礼とはどのようなものと考えられているのか、といえば、前回も説明したように、「宗教」なのでした。

「即位にともなういくつかの儀式や『大嘗祭』などは、まぎれもない宗教的な儀式です」

 したがって、単純明快に「違憲」と考えられています。

「政府は特別会計を組んで、それらを公的な儀式として行おうと考えているようですが、これは国の宗教行為を禁じた憲法第20条(国及びその機関は、いかなる宗教的活動もしてはならない)などに対する明白な違憲行為です」というわけです。

 しかし「宗教行為」「宗教的活動」「宗教的な儀式」は同じではないと思われるし、御代替わりの儀礼が憲法が禁ずる「国の宗教的活動」に当たるかどうかは議論を要するでしょう。


▽4 もし厳格主義にこだわるなら

 憲法は宗教の価値を否定しているわけではありません。むしろその逆です。宗教的存在である人間の価値を認め、信教の自由を保障しているのです。憲法を制定した「国民」は、無神論者ではありません。したがって、従来の解釈・運用も政教分離の厳格主義を採用してはいません。

 もしどこまでも厳格主義でなければならないとするなら、政府主催の戦没者追悼式も、各地にある公立墓地も否定されなければなりません。誰もそんなことは考えていません。

 原告団にはキリスト教の牧師先生もおられ、所属教会に原告団の事務局が置かれているようですが、もし本気で厳格主義を貫かれるなら、キリスト教主義学校への補助金は、憲法の公金支出禁止の条文に従って、返納されるべきだし、長崎県などが行政をあげて推進した潜伏キリシタン関連施設の世界遺産登録は振り出しに戻されなければなりません。

 もし厳格主義者なら、そのように主張され、提訴すべきです。そうでないなら、「なぜ、兄弟の目にある塵を見ながら、自分の目にある梁を認めないのか」とイエス・キリストが批判した「偽善者」となってしまうでしょう。憲法の大原則「法の下の平等」にも反するダブル・スタンダードです。

 パンフレットは最後に、政教分離問題こそがパンフレット作成の目的だと説明しています。

「安倍靖国参拝訴訟の論点の1つは、まさしくこの、『国が特定の宗教と結びつく』政教分離問題にありました。天皇の『代替わり』がマスメディアを賑わすなかで、天皇代替わりに関する政教分離問題に対する指摘が余りに少ないことを、私たちは懸念しています」

 筆者すなわち原告たちは、靖国訴訟も大嘗祭訴訟も、政教分離問題が中心的論点だと指摘します。御代替わり儀礼は「国の宗教的活動」に当たるのか、「特定の宗教」といえるのか、が争われるということになりますが、当メルマガの読者なら周知の通り、否でしょう。

 どうしても御代替わりを非宗教化したいと仰せなら、原告のお一人である牧師先生にぜひお願いしたいと思います。隗より始めよ、イギリスはじめヨーロッパの王制国家の、キリスト教と密接不可分に結びついた王位継承儀礼の非宗教化に、まず取り組んでいただけないでしょうか。アメリカ大統領の、ワシントン・ナショナル・カテドラルでの就任ミサの違憲訴訟を呼びかけていただけないでしょうか。御代替わり儀礼だけが非宗教化されなければならない理由はありません。

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